「休職詐欺」法人が直面した従業員トラブルの真相(後編)

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「休職詐欺」法人が直面した従業員トラブルの真相(前編)

予期せぬ展開:退職届と、水面下の「次の一手」

 

この調査期間中、思いもよらない展開があった。なんと、この二人から同時に会社へ退職届が提出されたのだ。

会社としては、もちろん受理するつもりだった。彼らのこれまでの態度や、今回の休職詐欺の疑いを考えれば、これ以上雇用を続ける理由はない。しかし、ここで問題が浮上した。

二人は、会社に対して「心労で休業中の給料の保障」を強く匂わせていたのだ。つまり、休業期間中の給与支払いを求めるだけでなく、それが認められなければ訴訟も辞さないという姿勢を示唆していた。これは、前回ブログで警鐘を鳴らした「労務リスク」が、いよいよ現実のものとなりつつあることを意味していた。

さらに、不穏な噂も耳に入ってきた。この二人、なんとすでに別の会社への就職が決まっている、というのだ。もしこれが事実なら、彼らは休職期間中に転職活動を行い、新しい職を得た上で、前職から不当な休業補償を巻き上げようとしていることになる。これは、もはや悪質な詐欺行為に等しい。

 

 

勤務先調査:暴かれた「心労」の真実と、新たな出発

 

会社側からの指示を受け、私たちはすぐに勤務先調査を実地することになった。彼らが本当に別の会社に就職しているのか、そしてそれがいつからなのかを突き止めることが目的だ。

まずは男性従業員の勤務先調査から。数日間の張り込みの結果、男性は朝からスーツを着て出勤し始めた。彼の向かう先は、都内のオフィス街にある中堅企業だった。足取りは軽く、表情は生き生きとしている。とても「心労」で休職していた人間には見えない。私は、彼が出社する様子、会社の外観、そして出勤時間を詳細に記録した。

男性の勤務先が判明した数日後、今度は女性の調査に移った。女性は、ある日、やはり都内の別のオフィスビルへと向かった。そのビルの1階ロビーで、女性は誰かと待ち合わせをしているようだった。しばらくすると、スーツ姿の女性が現れ、二人は1時間程度、真剣な表情で話し込んでいた。おそらく、転職先の担当者との最終的な打ち合わせか、入社手続きに関する説明だったのだろう。

そして、その翌日から、女性はそのオフィスビルへ出勤し始めたのだ。新しい職場での初日、彼女の表情にもまた、緊張感と期待が入り混じった、休職中の人間には見られない活力が満ち溢れていた。

念のため、二人の出勤確認の調査を数日間行った。確かな証拠を積み重ねるためだ。彼らが心労を理由に会社を退職し、その数日後には何食わぬ顔で別の会社へ出勤しているという事実。

これだけの証拠があれば、彼らが主張する「心労」の詐称は、問題なく立証できる。彼らが会社を欺き、不当な利益を得ようとしていたことが、客観的な事実として証明されたのだ。

 

調査結果、そして法廷へ:正義はどちらに

 

この調査終了後、約1ヶ月後だっただろうか。案の定、この二人は会社側に心労での休業補償と慰謝料を請求してきた。彼らは、自分たちの「心労」が会社側のパワハラによるものであり、その結果として休職せざるを得なかったと主張した。

しかし、会社側は動じなかった。なぜなら、彼らには探偵クロキが収集した、彼らの「心労」がいかに虚偽であるかを証明する、圧倒的な証拠があったからだ。二人が楽しそうにデートする写真や動画、そして何よりも、休職期間中に別の会社へ転職し、元気に出勤している事実。これらは、彼らの主張を根底から覆すものだった。

結果は、当然のことながら、会社側の勝訴だった。裁判所は、彼らの「心労」の主張を認めず、休業補償や慰謝料の請求を棄却した。彼らの目論見は、完全に失敗に終わったのだ。

そして、ここからが、この話のもう一つの肝だ。会社側は、この二人に加えて、彼らを紹介した転職サービスの会社にも損害賠償請求を検討し始めたのだ。これは、少し驚くかもしれないが、企業の側から見れば、当然の権利とも言える。

転職サービス会社は、求職者の情報を企業に提供する責任がある。もし、求職者が虚偽の情報に基づいて入社し、会社に損害を与えた場合、その責任の一部が転職サービス会社にも問われる可能性があるからだ。特に今回は、休職中の身でありながら別の会社へ転職していたという悪質なケース。転職サービス会社が、その事実を知りながら斡旋したのか、あるいは確認を怠ったのか。その過失の有無が争点となるだろう。

もし、転職サービスの会社への損害賠償が認められた場合、さらに興味深い展開が予想される。それは、この二人が、その転職サービスの会社からも損害賠償請求されるだろう、という点だ。虚偽の情報提供や、転職サービスの信用を毀損したとして、彼らもまた責任を問われることになる。まさに、自業自得という他ない。

 

探偵クロキが思うこと:労務リスクマネジメントの重要性

 

この一件は、私にとって非常に印象深い依頼だった。単なる「浮気調査」や「人探し」とは異なる、企業が抱える「見えない労務リスク」の深刻さを改めて認識させられたからだ。

従業員の「心労」や「うつ病」は、現代社会において非常にデリケートな問題であり、企業は真摯に向き合う必要がある。しかし、その一方で、一部の悪質な従業員が、この制度を悪用し、会社を欺こうとするケースも残念ながら存在する。

会社側が、何の証拠も持たずにこのような主張をされた場合、日本の労働者保護の原則から、非常に不利な立場に立たされることは間違いない。法廷で「本当に休んでいたのか?」と訴えても、それを証明する手立てがなければ、ただの感情論で終わってしまう。

しかし、今回の依頼のように、探偵が動かぬ証拠を収集することで、会社は毅然とした態度で反論し、正当な権利を守ることができた。 そして、さらに言えば、今回の件のように、転職サービス会社への責任追及まで視野に入れることで、同様の不正を働く者への抑止力にもなるだろう。

探偵の仕事は、決して万能ではない。しかし、このような複雑な労務トラブルにおいて、「事実を明らかにする」という点で、探偵の果たす役割は計り知れないほど大きい。法的な知識と、現場での調査力、そして何よりも、真実を追求する探偵としての「正義」。これらが一体となって初めて、依頼人の利益を守ることができるのだ。

あの二人は、自分たちの行動がここまで深く追及されるとは夢にも思っていなかっただろう。しかし、それが探偵の仕事だ。見えない闇に光を当て、真実を暴き出す。それが、探偵の使命なのだから。

 

 

 

 

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