探偵稼業に長年携わっていると、様々な夫婦の形、そしてその崩壊を目の当たりにする。
今回は、その中でも特に変わった、そして考えさせられる「オープンマリッジ」を巡る浮気調査の依頼について話そうと思う。
変わった浮気調査の相談:別居中の妻と慰謝料請求
一本の電話がかかってきた。相談者は男性。
話を聞くと、配偶者である妻とは別居中だという。
しかし、その別居は円満なものではなく、妻から離婚請求を受けているという。
ここまではよくある話だ。
しかし、ここからが少し事情が違っていた。
妻から離婚を突きつけられているだけでなく、なんと慰謝料請求までされているというのだ。
「そんな状況で、なぜ探偵に依頼を?」
私の頭の中には、いくつもの疑問符が浮かんだ。
通常、慰謝料を請求されている側が、わざわざ高額な調査費用を払ってまで、別居中の配偶者の浮気調査をするだろうか。
この相談者は、よほど妻の浮気に確信があるのだろうか。
さらに話を深掘りしていくと、この夫婦の間にあった、奇妙な「取り決め」が明らかになった。
二人は婚姻関係ではあったが、お互いに合意のもと、別の異性との関係を持つことを認めていたというのだ。
いわゆる「オープンマリッジ」と呼ばれる状態だ。相談者である夫は、自分のほうに別の女性がいることを、妻に隠していなかった。同様に、妻も別の男性がいることを夫に話していたという。
性的な関係があったかどうかまでは、お互いに踏み込んで確認はしていなかったらしい。
お互いに別の異性と付き合うことに合意していたはずなのに、なぜ今になって妻が慰謝料を請求してきたのか。夫はこう考えた。
「妻が弁護士を雇い、慰謝料を請求してきたのは、私の別の女性関係を不貞行為と主張するためだろう。ならば、こちらも妻の浮気の証拠を掴んで、慰謝料を相殺するしかない」
彼の考えは理にかなっていた。
しかし、探偵としてこの話を聞いた時、私は何とも言えない違和感を覚えた。
オープンマリッジに合意していたにもかかわらず、なぜ妻は今になって慰謝料を請求するのだろう。
もしかしたら、この「合意」は、夫と妻の間で、同じ意味で理解されていなかったのかもしれない。
空振りに終わった浮気調査
私たちは、クライアントである夫の依頼を受け、別居中の妻の浮気調査を開始した。
妻の住所、勤務先、そして生活パターンを徹底的に調べ上げる。張り込みを行い、彼女の行動を克明に記録していく。
しかし、調査は予想に反する結果となった。
妻には、男性の影が全く見られなかったのだ。
仕事帰りは、まっすぐ自宅に帰る。
休日は、友人とランチをしたり、買い物に出かけたりはするが、男性と二人きりで会うような行動は一切見られない。
もちろん、ラブホテルや不貞行為の証拠となるような場所に出入りすることもなかった。
我々は、数日にわたる調査を行ったが、結果は同じだった。
- 過去に会っていた男性とは、すでに別れたのか?
- それとも、離婚協議中なので、警戒して会わないようにしているのか?
- あるいは、元々夫が話に聞いていた「別の男性」は、単なる友人だったのか?
探偵として、この三つの可能性をクライアントに伝えた。
この浮気調査は、残念ながら空振りに終わった。
しかし、これは「浮気の証拠がなかった」という、クライアントにとっては不本意な結果ではあるが、「浮気をしていなかった」という、ある種の真実を証明したことにもなる。
弁護士を雇った本当の理由と、妻の「本音」
調査は不成功に終わったが、その後、クライアントから離婚協議の進捗について話を聞く機会があった。
結果として、慰謝料は無しで離婚できそうだという。
妻側にも浮気の証拠がないため、裁判になれば、夫婦間の「言った言わない」の話になるだろう。
クライアント側が裁判で不貞を認めなければ、慰謝料請求を棄却される可能性も高い。
クライアントの不貞行為の立証するのは妻側。
そして、ここでクライアントが語った、もう一つの真実が、私には非常に印象的だった。
クライアントと妻、二人の話し合いの中で、妻はこう言ったという。
「弁護士を雇って慰謝料を請求したのは、私自身の考えではなく、両親の考えなの」
妻は別に慰謝料を請求するつもりはなかった、と。
夫婦という関係の複雑さと、その外部にいる人間たちの影響力の大きさを、改めて痛感させられた。
しかし、この言葉が妻の本当の「本音」だったのか、私には分からない。
もしかしたら、夫との関係を円満に終わらせたいという妻なりの配慮だったのかもしれない。
だが、離婚を切り出したのが妻である以上、何かしらの不満があったのは間違いないだろう。
もしかしたら、夫にとっては「合意済み」だったオープンマリッジも、妻にとっては心の中で納得していなかったのかもしれない。
それが積もり積もって、ついに我慢の限界を超え、離婚を切り出すに至ったのかもしれない。
そこに、心配した両親が介入し、慰謝料請求という「武器」を妻に持たせた、という構図だったのではないか。
オープンマリッジと「身勝手」の議論
最近、人気ユーチューバーがオープンマリッジを巡って炎上していると聞いた。世間では、「男の身勝手」という意見が多いらしい。
しかし、探偵として様々な夫婦の形を見てきた私の経験から言うと、それは一概には言えない。
両者が心から合意していれば、オープンマリッジ自体に問題はないと私は思う。
今回のクライアントの妻のように、彼女自身が経営者で、夫に金銭的な依存をしているわけではないのであれば、嫌なら迷わず離婚をするはずだ。
そして、女性でも身勝手な人はいる。
男性側からオープンマリッジを提案するだけでなく、女性側から同様の関係を望むこともある。夫婦の関係性は千差万別で、当事者同士にしか分からない複雑な事情が絡み合っているのだ。
今回の依頼は、残念ながら「浮気調査」としては不成功に終わった。
しかし、私にとっては、オープンマリッジという現代的な夫婦の形が抱える潜在的な問題と、その背後にある人間の感情の複雑さを知る、非常に貴重な経験となった。
探偵の仕事は、ただ浮気を暴くだけではない。
依頼人の言葉の裏にある「真実」を探り、人間関係の複雑さを理解すること。それが、より良い解決策へと導く第一歩だと、私は信じている。
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