不貞行為があっても慰謝料が認められなった判例

この判例は少し特殊です。

事実関係が複雑なので説明します。

Xと上告人が不貞の関係にあり、被上告人はXの妻です。Xは上告人と不貞関係になる前に、別の女性と不倫関係にあり、被上告人はそのことを上告人が経営する居酒屋にて話しています。その後、Xは上告人の経営する居酒屋に訪れ上告人に対して、婚姻の約束をしその前提に肉体関係を持ちますが、被上告人はXと上告人の関係を知り、上告人対して慰謝料(500万円)を請求しますが、上告人はこれを拒みます。その後、被上告人は口頭での請求にだけではなく、上告人対して嫌がらせを行い、Xは上告人対して暴力を振るい、これを利用して上告人に対して、慰謝料の請求を行います。

 

最高裁は

「事実関係によると,上告人は,Xから婚姻を申し込まれ,これを前提に平成2年9月20日から同年11月末ころまでの間肉体関係を持ったものであるところ,上告人がその当時Xと将来婚姻することができるものと考えたのは,同元年10月ころから頻繁に上告人の経営する居酒屋に客として来るようになった被上告人が上告人に対し,Xが他の女性と同棲していることなど夫婦関係についての愚痴をこぼし,同2年9月初めころ,Xとの夫婦仲は冷めており,同3年1月には離婚するつもりである旨話したことが原因を成している上,被上告人は,同2年12月1日にXと上告人との右の関係を知るや,上告人に対し,慰謝料として500万円を支払うよう要求し,その後は,単に口頭で支払要求をするにとどまらず,同月3日から4日にかけてのXの暴力による上告人に対する500万円の要求行為を利用し,同月6日ころ及び9日ころには,上告人の経営する居酒屋において,単独で又はXと共に嫌がらせをして500万円を要求したが,上告人がその要求に応じなかったため,本件訴訟を提起したというのであり,これらの事情を総合して勘案するときは,仮に被上告人が上告人に対してなにがしかの損害賠償請求権を有するとしても,これを行使することは,信義誠実の原則に反し権利の濫用として許されないものというべきである。」

最判H.8.6.18

このように、不貞行為の相手方に嫌がらせ等を行えば、慰謝料を認められない可能性もあります。

(この判例を他の要因として不貞の関係になった原因として、Xと被上告人の婚姻関係の破綻を上告人が信用したのもあります。)

 

Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です