カレンダーが最後の一枚になり、街が浮足立つ12月末。
世間一般では「仕事納め」だの「忘年会」だのと賑やかな声が聞こえてくるが、我々探偵に「仕事納め」という概念は存在しない。
むしろ、世の中が休日に突入し、人々が羽を伸ばす時期こそ、不倫や浮気という「裏切りの花」が最も毒々しく咲き誇る季節なのだ。
今回は、数年前の「大晦日から元旦」にかけて行われた、ある浮気調査の記録をブログに綴ろうと思う。
これは、家族との団らんを捨ててまで、情欲という名のカウントダウンを選んだ一人の男と、それを極寒の路上で待ち構えた探偵たちの、孤独な戦いの記録である。
1. 聖夜を過ぎても終わらない、探偵の「繁忙期」
![]()
多くの人が誤解していることの一つに、「イベントの日は浮気調査がないのではないか?」というものがある。
クリスマスや大晦日は家族と過ごすのが「普通」だろう、と。
しかし、現実は残酷だ。 「仕事が忙しい」「急なトラブルが入った」「地元の友人と集まる」……。
そんな使い古された、しかし否定しづらい言い訳を盾にして、家族を裏切り、愛人との「特別な時間」を優先させる輩は、我々が想像する以上に多い。
特に大晦日。この日は「カウントダウン」という魔法の言葉がある。
深夜まで外出していても不自然ではない。むしろ、朝まで帰ってこないことへの免罪符として、これほど都合の良いイベントはないのだ。
今回の対象者である「浮気夫」も、そんな魔法に魅了された一人だった。
クライアントである奥様からの相談内容はこうだ。
「夫が、地元の友達とカウントダウン飲み会をして、そのまま日の出を見に行くと。帰宅は元旦の午前中になると言っています。でも、ここ数ヶ月の彼の様子からして、友達とだけ過ごすとは思えないんです」
奥様の声は、冷え切った冬の空気のように静かだったが、その奥には確かな確信と、深い悲しみが混じっていた。
調査の条件はシンプルだ。 「もし、日付が変わる頃まで本当に男友達と一緒に過ごしているのなら、その時点で調査を打ち切ってほしい。でも、もし女と会うのなら、最後まで証拠を撮ってください」
探偵としての本音を言えば、私も一人の人間だ。
大晦日くらいは温かい蕎麦をすすりながら、除夜の鐘を遠くに聞いて過ごしたいという気持ちがないわけではない。早く終われば、年始くらいはゆっくり過ごせるかもしれない……。
そんな甘い考えが頭をよぎったのも事実だ。
しかし、長年の経験からくる私の「探偵の勘」は、そんな淡い希望を無情にも打ち砕いていた。
「この男、絶対に女と会うな」
2. 喧騒の中の「静かなる尾行」
![]()
大晦日、午後。 都内某所の住宅街。私は相棒と共に、対象者の自宅付近で張り込みを開始した。
街は、正月の準備を終えた安堵感と、夜への期待感が入り混じった独特の熱気に包まれている。
スーパーの袋を抱えて急ぎ足で帰宅する人々。その横で、我々は周囲の景色に溶け込む。
予定時刻を少し過ぎた頃、対象者の夫が家を出てきた。
身なりは整っているが、どこか落ち着きがない。
地元の友人と会うにしては、少し気合の入りすぎたファッション。手に持ったスマホを頻繁にチェックしている。
その仕草だけで、彼が向かおうとしている先が「野郎どもの集まり」ではないことが手に取るように分かった。
案の定、駅へ向かった彼は、電車を乗り継ぎ、都心の繁華街へと降り立った。
そこは、カウントダウンパーティーを控えた若者たちや、最後の一杯を楽しもうとする人々で溢れかえっている。人の多さが、我々探偵にとっては大きな障壁となる。
「人が多くて面倒だな……」 本音が漏れる。
雑踏の中での尾行は、対象者を見失うリスクと、逆に至近距離になりすぎて露見するリスクのせめぎ合いだ。
人混みに紛れながらも、彼の後頭部から視線を外さない。
そして、その瞬間はすぐにやってきた。 駅の待ち合わせスポット。
そこで彼を待っていたのは、地元の男友達などではなかった。
我々が過去の調査ですでに特定している、例の「浮気相手」の女だ。
二人は合流するなり、誰が見ても恋人同士としか思えない親密さで腕を組み、雑踏の中へ消えていった。
私の「早く帰れるかもしれない」という淡い期待は、この瞬間に完全に消滅した。
代わりに、探偵としての冷徹なスイッチが入る。
「よし、長期戦だ。防寒対策を完璧にしろ」 相棒に無線で指示を送る。
3. 煩悩にまみれた居酒屋と、予感させる「宿泊」
![]()
二人はまず、予約していたと思われる賑やかな居酒屋へ入っていった。
店の中からは「カンパーイ!」という威勢の良い声が漏れてくる。窓越しに見える二人は、周囲の喧騒など耳に入らない様子で、見つめ合い、笑い合っている。
「大晦日に、妻には『友達と日の出を見る』と嘘をつき、自分は愛人と酒を飲むか……」 この仕事をしていると、人間の裏表の激しさに嫌気がさすこともある。
だが、その「裏」を白日の下にさらすのが我々の使命だ。
二人が店で過ごした時間は約3時間。
その間、私は店外の死角で、交代で冷たい缶コーヒーを飲みながら待機した。
冬の夜気は、容赦なく体温を奪っていく。カイロを体中に貼り付け、足先の感覚がなくなっていくのを無視して、彼らが出てくる瞬間を待つ。
23時を回る頃、ようやく二人が店から出てきた。 足取りは少し千鳥足。
酒が入ったことで、二人の密着度はさらに増している。 タクシーを拾うのかと思いきや、彼らは徒歩で移動を開始した。
向かった先は、ネオンが輝くラブホテル街……ではなかった。
「自宅だな」 私は確信した。
彼らが向かっているのは、浮気相手の女のマンションだ。
4. 迷宮の細路地 ~ 究極の「立ち張り」
問題は、ここからだった。 浮気相手の女が住んでいる場所は、都内でも有数の「古い住宅地」だった。
車一台がようやく通れるかどうかという、入り組んだ細い路地。
地図アプリで見れば一目瞭然だが、そこは「通り抜け不可」の文字が並ぶ迷路のような場所だ。
さらに厄介なことに、彼女の自宅は路地の突き当たりに近い位置にあった。
「これは、車を置けないな……」 探偵の張り込みにおいて、車両待機は基本中の基本だ。
車内であれば、最低限の暖を取りながら、カメラを固定して監視できる。
しかし、今回のような場所で車を停車させていれば、ものの5分で住民から「不審な車がいる」と通報されるのが目に見えている。
特に大晦日の深夜だ。
帰省している住民や、深夜まで起きている家族も多い。
少しの異変が目立つ時間帯。 我々は、作戦を変更した。
「片方の路地の入り口には車を配置。
もう片方の、自宅の正面が見える路地には、私が『立ち張り』で入る」
「立ち張り」とは、その名の通り、路上に立って監視を続けることだ。
これは肉体的に最も過酷な調査手法の一つである。 ただ立っているだけではない。不審者と思われないよう、景色の一部になり、存在感を消さなければならない。
しかし、日付が回った元旦の夜中。
0時を過ぎ、遠くから「おめでとう!」という歓声や、寺院の除夜の鐘が微かに響いてくる中、この細い路地を通る者など、猫一匹いない。
静まり返った元旦の午前1時。 誰も来ない路地。
私は、浮気相手の自宅マンションの玄関がはっきりと見える位置に、文字通り「仁王立ち」した。
……いや、実際には仁王立ちはしない。
身を潜めるようにして、気配を殺す。
5. 静寂という名の「味方」と「敵」
大晦日から元旦にかけての深夜の住宅街は、死んだように静かだ。
その静寂は、探偵にとって味方にもなり、敵にもなる。
まず、音が味方になる。
この静けさの中では、マンションのドアが開く「カチャ」という音や、階段を降りる足音、さらには住人の話し声までもが、驚くほどクリアに響く。
もし対象者が予定を早めて出てきても、音で即座に気づくことができる。
しかし、静寂は敵でもある。
こちらの出す小さな物音も、周囲に響き渡るからだ。
防寒着の擦れる音、一歩踏み出す時の靴の音。それらすべてに神経を使う。 何より恐ろしいのは、極寒の中での「沈黙」だ。
マイナスに近い気温の中、ただじっとしていると、寒さがナイフのように皮膚を刺し、思考を停止させようとする。
「今頃、彼は暖かい部屋で、愛人とシャンパンでも開けているんだろうな」 そんなことを考えると、余計に寒さが身に沁みる。 だが、その時、私のスマホにクライアントからのメッセージが入った。
「夫から連絡がありました。『友達と初日の出を待ってる。寒いけど楽しいよ』だそうです。本当に許せません」
そのメッセージを見た瞬間、私の寒さは怒りという熱に変わった。
家族を騙し、極寒の空の下に放置していると思い込ませながら、自分は温室で裏切りを謳歌する。
この男の「マヌケなツラ」を、最高の画質で撮ってやろうじゃないか。
6. 交代制の仮眠と、訪れない「日の出」
![]()
路地の入り口に停めた車両と、立ち張りの私。
我々は無線で連絡を取り合い、1時間ごとに役割を交代することにした。 車内に戻った時のヒーターの温かさは、まさに天国のように感じられる。
しかし、相棒が外で震えていることを考えると、ゆっくりはしていられない。
少しの仮眠と、温かいお茶で体力を回復させ、再び極寒の路地へと戻る。
空が白み始めてきた。 本来であれば、浮気夫が言っていた「初日の出」の時間だ。
路地の向こう、建物の隙間から見える空が、紫色からオレンジ色へと変わっていく。
初日の出。それは本来、希望や一年の決意を象徴するものだ。
しかし、この路地で私が待っているのは、希望ではなく、裏切りの証拠である。
午前7時。 近所の家々から、正月の朝特有の、お屠蘇の匂いや出汁の香りが漂ってくる。
平和な元旦の風景。その中で、一軒のマンションだけが、異質な空気を放っている。
そして、午前8時過ぎ。 その時は、唐突に訪れた。
マンションのオートロックが開く音が静寂を破る。
私は即座にカメラを構え、フォーカスを合わせる。
ファインダー越しに見えたのは、予想通り、昨夜の「浮気夫」だった。
昨夜のパリッとした服装は少し乱れ、顔には隠しきれない疲労と、それ以上の「充足感」が浮かんでいる。 彼は周囲を一度も警戒することなく、軽い足取りで路地を歩き出した。
その背後から、私はシャッターを切る。
マンションの玄関から出てくる瞬間、女と別れの言葉を交わしたであろう余韻。 すべてを、証拠として記録した。
彼はそのまま駅へと向かい、おそらくは何食わぬ顔で「初日の出、綺麗だったよ」と奥様に嘘を吐きながら帰宅するのだろう。
だが、彼の手元に残っているのは加工された思い出だけで、私の手元に残っているのは、彼の人生を左右する「残酷な真実」である。
「調査終了。お疲れ様」 私は相棒に無線を入れ、機材を片付けた。
冷え切った体がようやく、元旦の光に照らされて少しだけ温かくなった。
7. 探偵の視点:なぜ「イベント」こそチャンスなのか
今回の調査を振り返って、改めて思うことがある。 不倫をする人間は、なぜこれほどまでに「リスク」を軽視するのか、ということだ。
大晦日という、本来なら家族との絆を再確認する日に、わざわざ嘘をついてまで外泊する。 それは、相手の女性への想いが強いから……ではない。 多くの場合、それは単なる「自分への甘え」だ。
「自分だけはバレない」「この特別な日を、自分の思い通りに過ごしたい」 そんな幼児的な万能感が、彼らの判断力を鈍らせる。
探偵にとって、こうしたイベント日は、ある意味で「最も証拠が撮りやすい日」でもある。
なぜなら、対象者の行動が「予測可能」であり、かつ「大胆」になるからだ。
行動の予測可能性: イベント日は待ち合わせ場所や、その後のコースがある程度決まっている。
警戒心の欠如: 「お祭りムード」が彼らの警戒心を解く。周囲の人混みに紛れているという安心感が、彼らを無防備にさせる。
証拠の重み: 「大晦日の宿泊」という事実は、法的な場において、単なる食事とは比較にならないほどの不貞行為の裏付けとなる。
8. 最後に:元旦の朝に、真実を知るということ
今回の調査結果を、数日後、クライアントである奥様にお渡しした。
報告書に並ぶ、元旦の朝8時に愛人の自宅から出てくる夫の写真。 奥様は、それを見て、泣くことはなかった。
ただ、静かに一言、「これで、やっと前を向けます」とおっしゃった。
大晦日に嘘を吐かれ、一人で(あるいは子供と)初日の出を見た奥様の孤独を思うと、私の胸も痛む。 しかし、探偵ができることは、慰めることではない。 冷徹なまでに正確な「真実」を、武器として手渡すことだけだ。
探偵の仕事には、年末年始も、ゴールデンウィークもお盆休みもない。
それは、裏切りという行為にも、また休みがないからだ。
もし、あなたが今、誰かの嘘に苦しんでいるのなら。 街が華やぐ季節に、自分だけが闇の中にいるように感じているのなら。 いつでも、私たちを頼ってほしい。
極寒の路地で、仁王立ちしてでも、私たちはあなたのための「真実」を持ち帰る。
それが、探偵の誇りであり、仕事なのだから。
hy東京探偵事務所 町田オフィス
- TEL:042-732-3534
- FAX:042-732-3263
- MAIL:machida@hytokyo.co.jp
- 所在地:〒194-0013 東京都町田市原町田2-7-6-306 JR「町田駅」ターミナル口より徒歩5分
- グーグルマップはこちら⇒map
- 代表:黒木 健太郎
- 探偵業届出番号:東京都公安委員会 30180199号
hy東京探偵事務所 池袋オフィス
- TEL:03-6802-8160
- FAX:03-6802-8161
- MAIL:info@hytokyo.co.jp
- 所在地:〒171-0014 東京都豊島区池袋2-49-13杉山ビル2F JR「池袋駅」北口より徒歩3分
- 代表:原田 秀樹
- 探偵業届出番号:東京都公安委員会第30170109号
- 探偵業開始番号:東京都公安委員会第30110315号


コメントを残す