今回の依頼は、遊び癖のある夫、いわゆる「浮気夫」の調査だった。
元々、休日に一人でパチンコ屋へ行き、数時間を過ごすのが常だったという。
しかし、最近になって怪しい行動がみられるようになった。
スマートフォンをコソコソといじり出し、妻に見られないように隠すようになったというのだ。
クライアントは、「行動確認の意味も込めて」と控えめに依頼されたが、その女性の勘は鋭かった。
私たち探偵の直感もまた、この背後に「新たな異性の影」が潜んでいることを強く示唆していた。
1.最初のターゲット:カフェとラブホテルの「お決まりのコース」
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遊びの変化と調査の開始
クライアントからの情報では、浮気夫が休日出かけるのは大体昼過ぎ。私
たちは安全を期して、11:00から調査を開始した。
そして、予定通り、13時過ぎに浮気夫は家を出た。
慣れた足取りで最寄りの駅へと向かう浮気夫を、私たちは慎重に尾行を開始した。
しばらくして、案の定、駅近くのカフェで一人の女性と合流した。
カフェに入っていく二人の姿を撮影しながら、私は改めて女性の勘の鋭さに舌を巻いた。
確実な確証はなくとも、「スマホを隠す」という小さな変化から、裏切りを察知する能力は、探偵の鋭さに匹敵する。
確実な証拠と、遠距離の追跡
カフェで軽く話をした後、二人は迷うことなくラブホテルへ向かった。
まさに「お決まりのコース」だ。
入りの撮影、そして数時間の滞在後の出の撮影も、特に警戒行動は見受けられなかったため、スムーズに完了した。
ラブホテルで不貞行為の証拠は確定した。
その後の調査目的は、浮気相手の女性の自宅判明だ。
浮気夫と別れた女性を尾行し、彼女の生活拠点を探る。この情報が、後の慰謝料請求において必須となるからだ。
この女性は、電車を乗り継ぎ、かなりの距離を移動した。
浮気夫と別れてから、女性宅のマンションまで1時間半もかかった。「結構離れているな」というのが、率直な感想だ。
この距離は、二人が「日常的に会う」というよりも、週末などに「時間を調整して会う」関係性を示唆している。
2.衝撃の展開:金曜日の夜に現れた「二人目の女性」
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会社帰りの偽装工作
次の調査は、週末の金曜日。浮気夫はクライアントに「飲み会で遅くなる」と伝えていたという。
しかし、この話を鵜呑みにしないクライアントは、既に夫の裏切りを知っているため、迷わず調査を依頼した。
私たちは、浮気夫の勤務先近くで張り込みを開始した。定時後、彼は同僚たちとは違う方向へ向かう。
そして、駅前で一人の女性と合流した。
だが、この女性を見て、私たちのチーム内に緊張が走った。初日に会った女性とは、別人だったのだ。
「二人目が出てきた」
私たちは、この事実を静かに記録した。
二人は食事を共にし、その後、初日のパターンと同じくラブホテルへ直行した。
複数の女性とマッチングアプリの可能性
この時点で、浮気夫が複数の女性と並行して関係を持っていることが確定した。
クライアントと相談の上、今回は女性宅の判明調査は見送ることになった。
なぜなら、複数の女性が出現した場合、その多くがマッチングアプリ系の可能性が高いからだ。
マッチングアプリで知り合った場合、浮気相手は浮気夫が既婚者であることを知らなかったと主張する可能性が高い。
もし、相手女性が「既婚者だと知らなかった」と主張し、それが認められれば、慰謝料請求が認められないという、探偵としても歯がゆい法的な壁が存在する。
慰謝料請求が難しい相手の自宅を判明させるために、さらに調査費用を投じるのは、依頼人の負担が増すだけだ。
私たちはクライアントと協議し、この女性が「遊び」ではなく「本命」となり、複数回会うようなら、改めて自宅を判明させる方針で一致した。
この後、調査はしばらく空振りが続いた。
休日はスマホではなく、再びパチンコ屋で時間を潰し、週末は本当に同僚との飲み会だった。
警戒しているというよりも、遊びの周期が不定期なのだろう。
3.決定的な疑惑:三番目の女性と「本命」の影
不意打ちの遭遇と、三度目の正直
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そして迎えた次の休日。
この日は、朝11:00前から張り込みを開始していた。
私たちが浮気夫宅に向かう途中、なんと、駅へ向かう浮気夫とすれ違った。
クライアントからの連絡はなかった。
どうやら、浮気夫が家を出たのに、クライアントが気づかなかったようだ。
私たちは慌てて調査を開始した。
幸い、彼は駅へと向かっていたため、すぐに尾行の態勢を整えることができた。
駅で電車に乗り込んだ浮気夫は、ある場所で降車し、なんと三番目の女性と合流した。
手繋ぎ散歩と「本命」の定義
この女性との行動は、今までの二人とは明らかに違っていた。
食事を済ませた後、ラブホテルへ直行すると思いきや、二人は手を繋ぎ、公園を散歩しだしたのだ。
今までの二人とは違い、デートの行程に「情緒」が含まれている。
マスクをしているため、正確な顔立ちは分からないが、今までの女性の中では一番若く見える。
「この女性が本命か?」
探偵の視点は、冷静な証拠収集を旨とするが、夫婦関係の崩壊という現場に立ち会う者として、対象者の「本気度」を測る視点も必要だ。
手を繋いで公園を散歩する。
この行為は、単なる「遊び」ではない、精神的な繋がりを求める関係性を示唆している。
散歩を楽しんだ後、やはり二人はラブホテルへ向かった。不貞行為の証拠は、確実に押さえた。
4.ショッピングモールに消えた女性
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クライアントに一連の流れを伝え、三番目の女性は複数回の接触は確認できていないものの、「本命」の可能性を考慮し、自宅まで判明させることにした。
ラブホテルを出て、浮気夫と別れた後、女性の尾行を開始した。
この女性もまた、電車を乗り継ぎ、1時間近くかかった場所で降りた。
遊びの関係ではない可能性が高いが、やはり物理的な距離がある。
女性が降りた駅は、大きなショッピングモールが併設された場所だった。
彼女は駅を出て、そのままショッピングモールに入って行った。
しかし、彼女が向かったのは、顧客が出入りするメインの入り口ではない。
通用口から、バックヤードへと消えて行ったのだ。
「これから仕事か……」
モール内に入り、店舗を確認したが、彼女の姿はどこにも見当たらなかった。
彼女は、このショッピングモール内のテナントで働いていることが濃厚だと判断し、この日の調査は終了とした。
5.探偵の結論:多すぎる「遊び」の代償
最終的に、クライアントは、浮気夫が三人の女性と不貞行為に及んだ証拠を複数回得ることはできた。
相手の女性たちは、やはりほとんどがマッチングアプリで知り合ったのだろう。
しかし、クライアントは、最終的な決断として、女性たちへの慰謝料請求は諦めることになった。
理由は、やはり「知らなかった」という反論のリスクと、複数の女性への法的手続きにかかる時間、そして精神的な負担が大きいと判断したからだ。
三番目の女性が「本命」であったとしても、複数回会った証拠がない以上、裁判で争うにはコストがかかりすぎる。
クライアントは、この決定的な証拠をもって、夫との離婚交渉に臨むことを決意し、調査を終了することになった。
浮気夫は、パチンコからスマートフォンへと「遊び」の場を変え、最終的には三人の女性と関係を持つという、多すぎる「遊び」の代償を払うことになるだろう。
彼の身勝手な欲望の追求は、彼の家庭と、彼の人生に、大きな亀裂を入れたのだ。
探偵の仕事は、その亀裂を可視化することにある。
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