マヌケな浮気夫の「変装と疾走」喜劇

探偵稼業とは、しばしば人間の「業」を追う仕事だ。

特に法的な協議が進行中の浮気調査では、対象者の行動一つ一つが、その後の人生を決定づける重みを持つ。

今回の調査対象は、以前にも証拠を掴んだ別居中の浮気夫だ。

彼は既に不貞行為の証拠を開示され、クライアント側からの慰謝料請求に応じ、双方の弁護士を介した協議の最中にいる。

しかし、このケースを「マヌケ」と評さざるを得ない理由は、一つではない。

最大の愚行は、浮気相手と二度と会わないという内容の誓約書に、弁護士を交えて署名した直後に、その誓約を破った疑惑が浮上したことだ。

慰謝料の金額や離婚条件について話し合っている最中に、自らその協議の前提を崩すとは、もはや理解に苦しむ行動だ。

 

その「疑惑」を確証に変えるため、私たちは再び、彼の別居先へと向かうことになった。

 

 

異例の調査背景:法廷へ向けた「裏切りの証拠」

 

1.誓約書という名の重い枷

 

慰謝料請求や離婚協議の場で、浮気をした配偶者が浮気相手と別れる意思を示すために「今後二度と会いません」という誓約書を交わすことは珍しくない。

これは、法的な和解や示談に向けた誠意を示すものであり、弁護士同士の合意の上で作成される極めて重要な文書だ。

しかし、この浮気夫は、その誓約書に署名したにもかかわらず、浮気相手と会っているという。

もしこの事実が確認されれば、彼の交渉における立場は完全に崩壊する。

慰謝料の増額は避けられず、彼の主張する離婚条件はほぼ通らないだろう。彼は、自らの手で首を絞める行為を、再び繰り返そうとしていたのだ。

 

2.警戒心と時間との闘い

 

今回の調査は、前回と比べて難易度が格段に上がっていた。

  • 警戒心の存在: 彼は以前に探偵をつけられたことを知っている。当然、別居先の周囲に「探偵らしき人物」がいないか、注意深く観察しているはずだ。
  • W不倫の時間的制約: 浮気相手も既婚者(W不倫)だ。これは、彼女にも家庭があることを意味する。したがって、夜遅い時間や、平日の勤務時間中に会う可能性は低い。私たちの経験上、W不倫の場合、相手の家庭が動き出す20時を過ぎれば、密会する可能性は極めて低くなる

 

私たちは、別居先のマンション周辺で、昼前から張り込みを開始した。

昼間の張り込みは、一般人に紛れるのが最も難しい。詳しく書けば、同じように浮気をする輩に対策されても困るので、具体的な張り込みの仕方は企業秘密とさせていただく(笑)。

ただ、言えるのは、長時間、周囲に不自然な要素を与えないために、私たち探偵は、まるでその場に生えている木か、置いてある自販機の一部になったかのように、微動だにしない訓練を積んでいるということだ。

日が落ち、空が茜色から深い藍色に変わる時間帯になっても、浮気夫が出る気配は全くない。

時計の針が20時を指し、撤収の可能性が頭をよぎり始めた頃だった。

 

3.突然の「疾走劇」:カンフー映画のアクション

静まり返った暗がりの中、突然、走る人影が飛び出してきた。

浮気夫だ。

私は思わず「また走るのか!」と心の中でツッコミを入れた。

なぜ、警戒する対象者はとりあえず走るのだろうか。急いでいるのか、それとも無意識の内に焦りを感じているのか。

おそらく、その両方だろう。

彼は、脇目も振らずに最寄りの駅へと一直線に走る。

私たちも、周囲に溶け込みながら、しかし決して遅れをとらないスピードで後を追う。

駅に到着した彼は、改札をくぐらずに、なぜかその改札前で立ち止まって待機した。

「これは浮気相手を待つパターンか?」と一瞬身構えたが、どうも様子が違う。彼は頻繁に腕時計とホームの電光掲示板を見比べている。

電車の時間の調整だ。

そして、電車の到着時刻に合わせて、彼は再び動き出した。改札を通過し、そのままホームを突っ切り、走って電車に飛び乗った

その一連の動きは、まるでカンフー映画のアクションを見ているようだった(笑)。

もし、あと数秒遅ければ、目の前でドアが閉まっていただろう。探偵人生の中でも、これほどまでにアクロバティックな対象者を追うのは珍しい。この調子では、電車を降りたらまた走るのかと、一瞬、体力的な不安が頭をよぎった。

「ちょっとしんどいぞ」と相棒に無線で呟いたのは言うまでもない。

 

4.滑稽な偽装工作:変装と仁王立ちの罠

 

電車を降りると、幸いにも駅構内はかなりの人ごみで、彼は走ることができなかった。助かった。

彼は人ごみを縫うように早歩きで進む。

私たちは、その背中を絶対に見失わないよう、人ごみの圧力と戦いながら、懸命に尾行を続けた。人ごみが少なくなるやいなや、彼は再びギアを上げ、小走りで階段を駆け上がった

「これは、階段の中腹とかで浮気相手が待っているパターンか?」

過去の経験から、私は最悪の事態を予想した。

もし彼が階段の中腹で立ち止まれば、そのまま階段を上がりきらなければならない我々は、一時的に彼を見失うか、あるいは接近しすぎてしまう。

その予想は、案の定、当たった。地下の駅から地上に出る階段の中腹、そこにあった店舗の入り口の前で、対象者は仁王立ちしていた。

私たちは調査の継続を最優先し、そのまま階段を上がりきり、別の角度から彼を監視するポジションへと移動した。

様子を窺っていると、浮気夫自身が階段を上がってきた。

警戒しているが、行動が中途半端だ。

 

迷走する変装の儀式

彼は、そのまま繁華街の中心へと向かい、特に目的もなくふらふらと繁華街を一周した。

ここで、彼の滑稽な「偽装工作」が始まった。

彼は手にもっていた鞄から何かを取り出し、それを装着し始めたのだ。

  • マスクを取り出し、顔を覆う。
  • 帽子を深くかぶり、頭部を隠す。
  • そして、最後に眼鏡をかける。

その「変装」の様子を、私たちは一瞬の隙も見逃さず、全て高感度カメラで撮影した。

会う前に変装するんだ(笑)。

変装するなら、最初から家を出る前にすればいい。

なぜ、駅を走り抜け、人ごみを早歩きし、目的地に到着してから、周囲の視線を気にして変装するのか。

このパターンは私も初めて遭遇した。彼の警戒心が、もはやチグハグな行動となって表れている。

滑稽以外の言葉が見つからない。

 

5.証拠の確保:マヌケなミスと最後の逃亡

 

 

1.バレバレの密会場所

 

変装を終えた直後、浮気夫は浮気相手と合流した。やはり、彼女も既婚者であるため、変装した彼を待ち合わせ場所で待っていたのだろう。

二人は、ある飲食店に入って行った。店の造りからして、個室居酒屋か。個室で会うということは、店内での撮影は難しいかもしれないと、私は一瞬覚悟した。

しかし、またしても浮気夫の「マヌケ」な行動が、私たちに味方した。

彼らが店に入ってすぐ、どうやら満席だったのか、数分も経たずにすぐに出てきてしまったのだ。

その後、二人が入った別の飲食店は、外からまる見えのガラス張りの店だった。

店に入った浮気夫は、警戒している様子はない、流石に食事中は不自然だと思ったのだろう。

帽子とマスクは外したが、なぜか眼鏡は掛けたままだ

この判断は、探偵にとっては天の恵みだった。

私たちは、店外の安全な場所から、二人が向かい合って食事をし、談笑する様子を、撮影し放題で記録することができた。

若干ガラスに反射して分かりづらい部分もあったが、不貞行為の証拠である「密会」の証明としては、全く問題ないレベルだ。

 

2.最後の「裏切り」

 

二人が食事を終え、席を立った。どうやら店から出るようだ。

浮気夫が先に店を出て、その後に浮気相手が続く、という順序だったが……

まさか、ここで店を出た瞬間、浮気夫が再び走って人ごみに消えて行った。

私は思わず「またか!」と叫びそうになった。浮気相手は、彼が突然走り出したことに、呆然として立ち尽くしている。

この状況で、浮気夫を走って追いかけることはできない。

なぜなら、彼を追う探偵の姿を、浮気相手に確実に見られてしまうからだ。

浮気夫にバレるだけならまだしも、浮気相手に尾行を悟られると、今後の交渉や、彼女の自宅特定に悪影響を及ぼす。

私たちは、冷静に判断し、浮気夫の追跡を諦めた。

しかし、目的は既に達成されていた。弁護士同士の合意文書(誓約書)を交わした後にもかかわらず、彼が浮気相手と密会した決定的な証拠は、しっかりとカメラに収められていた。

 

探偵の総括:愚かさの極致

今回の調査は、終始、この浮気夫の「愚かさ」に付き合わされた格好だ。

  • 法的な文書に署名したにもかかわらず、すぐに破る浅はかさ。
  • 探偵を警戒しながらも、ランニングやアクロバティックな電車乗車という、目立つ行動をとるチグハグさ。
  • 人目に付く場所で、何の防御力もない変装をする滑稽さ。
  • そして、浮気相手を置き去りにして、自分だけ逃げるように走り去る無責任さ。

 

このマヌケな浮気夫の行動は、クライアント側の弁護士にとって、最高の武器となるだろう。

彼は、自らの愚行の証拠を、自ら私たちに提供してくれたのだ。

どんなに巧妙な浮気も、人間の「焦り」と「身勝手さ」という感情は、嘘をつかない。

今回の調査は、その真理を再確認させられる、非常に印象的な一件だった。

 

 

 

 

 

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